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「動物由来感染症」とは、ペットなどの動物から人に感染する感染症の総称です。近年のペットブームによりクローズアップされている「動物由来感染症」は、重荷病原体を保有する動物との緊密な接触により感染します。 |
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現代では、航空機の発達による国際交流が活発になり、地球規模で人が移動するようになりました。また、経済発展に伴う熱帯雨林の伐採など、生態系の破壊による病原体の拡大が危惧されています。さらに、海外から輸入される犬や猫以外の動物をペットとする人が増えています。このような状況のもと、エボラ出血熱、エイズ、腸管出血性大腸菌O157など、これまでにはなかった感染症(新興感染症)が出現しました。 |
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わが国における新たな感染症の発生に備えて新しい対策を確立するため、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」(以下「感染症法」という)及び「改正狂犬病予防法」が平成11年4月1日より
施工されました。 |
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このなかで、エボラ出血熱とマールブルグ病にかかっているか又はその疑いがあるサルや、狂犬病にかかっているか又はその疑いがある猫、あらいぐま、きつね、スカンクの届出が新たに義務づけられました。(犬の狂犬病は従前より届出対象)
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輸入サルについては、エボラ出血熱及びマールブルグ病の侵入防止を図るため輸入禁止地域(現在はアメリカ、中国、フィリピン、ベトナム、インドネシア、ガイアナ、スリナムを除く全世界)を定めました。また、サル、猫、あらいぐま、きつね、スカンクの輸入時の動物検疫が平成12年1月1日より義務づけられました。
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感染症の多くは動物由来感染症であり、感染症予防法において、感染症対策を進めるための情報の収集、国民への情報提供、調査研究・診断体制の整備などが、国または自治体の責務とされました。これからも、動物由来感染症の情報収集および提供体制を整備するとともに、狂犬病対策としては、引き続き犬の狂犬病予防注射、野犬の捕獲・翌留を実施していきます。 |
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動物由来感染症の病原体に感染しても動物は無症状なことがあるため、知らないうちに飼い主が感染してしまう場合があります。ペットの定期検診を受けるなど健康管理に注意し、病気を早めに見つけましょう。また、ペットが病気と診断された場合、動物由来感染症であるか否かを獣医師に確認しましょう。 |
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ペットのかかりつけ動物病院を持ち、相談できる関係づくりが大切です。飼い方、病気の予防やワクチン接種などの相談ができると安心です。まず、自分の身近な動物から感染の恐れのある動物由来感染症について、知識を得ることが大切です。 |
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動物由来感染症に感染しても、かぜやインフルエンザ、皮膚病などに似た症状が出る場合が多く、病気の発見が遅れがちです。特に子どもや高齢者は感染しやすいので要注意です。早めに医療機関で受診し、必要に応じてペットの飼育状況についても医師に説明しましょう。 |
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現在、動物由来感染症は世界保健機関(WHO)で確認されているだけでも150種類以上あります。新興感染症には感染力が強く、重傷化する傾向があり、有効な治療法がまだ開発されていないものもあります。また、最近はすでに克服したと考えられていた結核やマラリヤなどの感染症(再興感染症)も、再び猛威を振るっています。
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咬傷により感染する脳神経系のウイルス病ですべての哺乳類が感染し、発症すれば致命的である。 |
感染経路・感染状況 |
感染した犬、猫、あらいぐま、きつね、スカンクなどが感染源となり、すべての哺乳類が咬傷により感染する。
日本(1957年以降発生なし)、オーストラリア、ニュージーランド、英国などを除く多くの地域で発生がみられる。 |
症状 |
人:平均30日の潜伏期間の後発症し、致命率はほぼ100%である。初期はかぜに似た症状、咬傷部位の知覚異常が見られ、不安感、恐水症、興奮、麻痺、精神錯乱などの神経症状が現れ、数日後に呼吸麻痺で死亡する。
動物:攻撃的になるとともに、筋肉の痙攣発作により水を飲むことができない状態(恐水症)、涎を多量に流した状態になる。脳炎の進行にともない死亡する。 |
予防法 |
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ワクチン接種の励行(犬は狂犬病予防法により義務付けられている)。 |
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犬等の輸入については検疫等の必要な措置を図る。 |
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野犬の捕獲を行う。 |
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感染動物に咬まれた場合、できるだけ早く患部を洗浄し、抗狂犬病ヒト免疫グロブリンを注射し、不活化ワクチンを接種する。 |
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オウム病クラミジアに感染した鳥類から感染する呼吸器感染症。 |
感染経路・感染状況 |
鳥類を自然宿主とし、世界に広く分布している。オウム、インコ、カナリア、ハトなど排泄物に含まれる菌を吸入して感染する。また、口移し餌を与えることによっても感染する。 |
症状 |
人:潜伏期間は1〜2週間で、突然発熱(38℃以上)で発症し、インフルエンザ様症状が起きる。重症化すると呼吸困難、髄膜炎を起こし、まれに死亡することもある。
鳥類:元気喪失、食欲不振、下痢、呼吸困難を起こし、1〜2週間で死亡する。 |
予防法 |
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鳥類はなるべく屋外で飼育し、口移しで餌を与えない。 |
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乾燥した糞は空中を漂い、吸入しやすいため、速やかに処理する。 |
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治療にはテトラサイクリン系の抗生物質が有効で、10〜14日間の投与が必要。 |
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オーストラリアやヨーロッパで、牛・羊の牧場、食肉加工業者の間で発生した病気。 |
感染経路・感染状況 |
ダニが病原体を媒介し、野生動物、家畜、ペットなどが不顕性感染している。この病原体に汚染された牛や羊の尿、糞便などを人が吸引することで発病する。また、汚染された肉や牛乳を飲食することでも感染する。 |
症状 |
人ではインフルエンザ様症状で、悪寒、急激な発熱(38〜40℃)が起こり、特に頭痛や筋肉痛が強い。また肺炎症状、肝機能障害が見られ、心内膜炎に移行すると死亡率が高くなる。 |
予防法 |
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野山などでの肌の露出を避け、虫よけ剤を塗布する。 |
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急性Q熱にはテトラサイクリン系、クロラムフェニコールの抗生物質が有効。 |
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わが国では北海道で多包条虫症が存在する。 |
感染経路・感染状況 |
終宿主(キタキツネやイヌなど食肉獣)の糞に混じって排出されたエキノコックス虫卵を、食物や水などを介して人が経口的に摂取することにより感染し、幼虫は肝臓で増殖する。 |
症状 |
終宿主である食肉獣には寄生するだけで害は与えないが、人が感染すると症状が出るまでには10〜15年かかるものの発症する。肝臓に寄生し腹痛、肝機能障害、腹水などを呈し、全身症状の悪化により死亡する。 |
予防法 |
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流行地ではキタキツネや野犬との接触を避け、野菜、果物、キノコなどはよく水洗いをし、生水は飲まないようにする。 |
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完全な治療法はなく、最も有効な治療は外科手術による病巣の完全切除である。 |
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かつて人類に甚大な被害を与えた激烈な流行病。 |
感染経路・感染状況 |
感染小動物(ネズミなど)の体液が直接又はノミを媒介して感染する。日本は1926年以来発生はないが、南北アメリカ、アフリカ、アジアで地方病的に存在し、世界的には1990年以降患者は増加している。 |
症状 |
腺ペスト、肺ペストに大別され、ヒトのペストの80〜90%が腺ペストである。腺ペストの場合は、急激な発熱(38℃以上)、リンパ節の腫脹などが起こり、治療しなければ50%以上死亡する。肺ペストの場合は、高熱、せき、血痰、呼吸困難をきたし、90%以上死亡する。 |
予防法 |
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ネズミやノミの徹底駆除。 |
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感染動物は処分し、死体や排泄物、汚染物は焼却する。 |
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ケージや汚染器具は厳重に消毒する |
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ストレプトマイシン、テトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、クロラムフェニコールが治療に有効。 |
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ハンタウイルス感染症には腎症候性出血熱(HFRS)と他にハンタウイルス性肺症候群(HPS)がある。ラット等が感染源となり、実験動物管理上重要。
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感染経路・感染状況 |
げっ歯類が自然宿主であり、糞尿中に排出されるウイルスの吸引や咬傷から感染する。極東アジア(中国)、北・東欧が流行地である。わが国は1970年代に発生後、流行はない。人から人へは感染しない。 |
症状 |
げっ歯類には症状は現れないが、人ではドブネズミが媒介するソウル型とセスジネズミが媒介するハンターン型のウイルスは重症のHFRSを引き起こすことが多い(致命的約10%)。突然の発熱、頭痛、腹痛に続き重症化すると出血傾向が激しく、その後腎不全の兆候を呈す。軽傷の場合は、一時的に尿量が減少するのみで、急速に回復する。 |
予防法 |
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ネズミの徹底駆除。 |
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ケージや汚染器具は厳重に消毒する。 |
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ハツカネズミ等が感染源となり、実験動物管理の上からも重要。 |
感染経路・感染状況 |
野生ハツカネズミを自然宿主とし、世界中に分布している。ウイルスは一生持続感染し、人へは持続感染動物の尿や唾液などに含まれたウイルスが直接感染する。 |
症状 |
げっ歯類には症状は現れず、また人の感染者の約3分の1は無症状。典型的な症状は発熱、筋肉痛などインフルエンザ様の症状で、重症の場合は、髄膜炎や脳炎を引き起こす。 |
予防法 |
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野生ハツカネズミが家屋や動物施設へ侵入するのを防ぐ。 |
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実験動物では定期的にLCMウイルス抗体を検査し、感染動物を除去する。 |
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ウサギを感染源とする感冒様症状を呈する感染症。 |
感染経路・感染状況 |
感染源は野生げっ歯類(ウサギ、ネズミなど)、野鳥などで、アメリカ、ヨーロッパ、ロシア、日本(東北6県とその周辺の地域)に分布する。蚊、サシバエ、マダニなどによる間接、あるいは感染動物の血液に直接触れたりすることによる感染が多い。また野ウサギの調理不十分により経口感染することもある。 |
症状 |
感染した野ウサギの症状は不明だが、人の場合は通常3〜4日の潜伏期を経て、発熱、悪寒、関節痛などが現れ、菌が侵入した箇所のリンパ節が腫脹する。 |
予防法 |
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ダニの駆除 |
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汚染された動物の解剖の際は、ゴム手袋やゴーグルなどを着用する。 |
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アミノグリコシド系(特に硫酸ストレプトマイシン)が有効で、テトラサイクリン系抗生物質と併用すると良い。
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1996年に学校給食を中心にわが国で多発。 |
感染経路・感染状況 |
本菌は牛などの大腸に自然生息しており、人へは汚染された食品(生肉や土のついた野菜)や水を介して経口感染する。少量の菌でも感染するため、患者や保菌者の便からの2次感染も起こる。日本では1996年に大規模な食中毒が発生した。 |
症状 |
水溶性下痢と腹痛で発症し、血便、発熱、嘔吐などの症状も見られる。重症化すると貧血や血小板の減少、腎 不全、けいれんや意識障害(HUS:溶血性尿毒症症候群)を起こし、死亡する場合もある。 |
予防法 |
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食材をよく加熱し、また生野菜はよく水洗いする。 |
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また板やフキン、包丁など、調理用具を熱湯消毒する。 |
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便で汚染した衣類や寝具は十分消毒する。 |
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1976年に初めてスーダンとザイールで流行した極めて重篤な出血熱。 |
感染経路・感染状況 |
アフリカ型とアジア型(レストン株)の2種類があるが、前者はアフリカ地域のみに発生し、サルから人への感染経路は不明である。流行地では患者の血液、体液との接触や、注射針の頻回使用などによる接触感染がある。後者は接触あるいは空気感染によるサル類のみに致命的な疾病であり、人の発症はない。 |
症状 |
人:発症は突発的、症状の進行は重傷インフルエンザ様で、高熱、頭痛、胸・腹部痛及び出血(吐血、下痢)などがある。死亡者の90%以上に消化管出血が見られ、致命率は53〜88%である。
サル:カニクイザル、アフリカミドリザルでは、元気消失、沈うつ、出血、肝機能障害などの症状が現れ、6〜10日で100%死亡する。 |
予防法 |
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流行地ではサルとの接触を避ける。 |
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サル類の輸入については検疫等の必要な措置を図る。 |
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医療関係者は針刺し事故に注意し、マスク、ゴーグルなどを使用すること。 |
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特異的なワクチン及び治療薬はない。 |
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1967年に初めて西ドイツとユーゴスラビアにおいてアフリカミドリザルから人が罹患した、極めて重篤な出血熱。 |
感染経路・感染状況 |
患者は東アフリカを中心に散在的に発生し、自然界から人への感染経路は不明であるが、サル、人から人へは血液、体液などの接触により感染する。 |
症状 |
人:5〜9日の潜伏期の後、高熱、頭痛、筋肉痛に続き、斑状発疹が現れ、その後下痢、花口腔・消化管出血、肝機能障害、多臓器不全などが見られ、致命率は約25%である。
アフリカミドリザル:人と同様に出血熱を起こし、感染後は100%死亡する。 |
予防法 |
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流行地ではサルとの接触を避ける。 |
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サル類の輸入については検疫等の必要な措置を図る。 |
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医療関係者は針刺し事故に注意し、マスク、ゴーグルなどを使用すること。 |
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特異的なワクチン及び治療薬はない。 |
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サルから感染する致命率の高い重篤な脳炎症状を呈するウイルス病。 |
感染経路・感染状況 |
自然宿主は東南アジア産のアカゲザルやカニクイザルで、サルに咬まれたり引っ掻かれた際に感染する。空気感染は起こらない。 |
症状 |
人:傷口の発赤、腫脹、水疱形成に続いて、頭痛などの全身症状と嚥下困難、麻痺などの脳神経症状が起こり、数週間後に死亡する。致命率は75%に達する。
サル:口腔粘膜などに水疱が現れる程度で、重篤な病気は起こさないが、時に唾液中に多量のウイルスが含まれており感染源となる。 |
予防法 |
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ワクチンなどの予防法がない。 |
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サル類の輸入時には検査の徹底を図る。 |
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サル類に咬まれた場合は、速やかに患部を洗浄・消毒する。 |
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抗単純ヘルペス剤(アシクロビル、ガンシクロビル)が有効である。 |
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赤痢菌によって起こる人の急性消化器系感染症。 |
感染経路・感染状況 |
主な感染源は人であり、サルは捕獲時に人から経口感染することが知られている。東南アジア、アフリカなどで発生し、わが国の患者の約70%が海外で感染している。 |
症状 |
人では発熱、腹痛、下痢などを呈す。下痢は1日に数回から数十回にも及び水様性から膿粘血便になる。サルでは比較的症状は軽い。 |
予防法 |
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東南アジア、アフリカなどでは、生水(特に氷)、生ものの摂食を避ける。 |
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サル類の輸入時には検査の徹底を図る。 |
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薬剤耐性菌が多いがホスホマイシンには耐性率は低い。 |
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最近、増加傾向にあるため、厚生省は「結核緊急事態宣言」を発した。 |
感染経路・感染状況 |
世界中で見られ、日本の罹患率は先進国では高い。人からサル、イヌなどに感染し、再び人に感染する場合や、患者のせきなどとともに排出された結核菌を吸入することにより飛沫感染をおこす。 |
症状 |
せき、痰、微熱などかぜに似た症状が2週間以上続く。病状が進むと、全身倦怠、血痰、喀血、呼吸困難などの症状が起こり、粟粒結核や髄膜炎など重症化する場合もある。 |
予防法 |
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BCG接種を行う。 |
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せきが2週間以上続いたら結核を疑って、早急に診療を受ける。 |
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接触者検診を行い、患者を早期発見する。 |
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サル類の輸入時には検査の徹底を図る |
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